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名古屋市交通事業の長期的な展望について,現時点の情報から推論した私見を述べます.
前半の内容は,令和4年(2022年)3月に執筆(途中)の記事です.
アフターコロナの利用者動向が不透明であり,状況は刻々と変化しています.
当ページの記事は,その時点の状況における私見である旨,ご了承ください.
COVID-19の市営交通事業への影響(執筆中) |
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順風満帆とも思われた状況から一転,厳しい経営環境となった市営交通事業について.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のための緊急事態宣言発出等により,人流が大きく減少し,市バス・地下鉄利用者も大きく減少しました.
令和元年度(コロナ前)と比較すると,概ね2割から3割程度の減少となっています.
<図表準備中>
令和元年度(コロナ前)から令和4年にかけての収支状況です.
令和元年度と2年度は決算額,令和3年度は決算見込額,令和4年度は予算額です.
市バス事業.
市バス事業(百万円) |
元年度 |
2年度 |
3年度 |
4年度 |
経 常 収 入 |
運輸収益 |
18,408 |
13,644 |
14,320 |
14,988 |
一般会計補助金 |
4,057 |
6,463 |
6,128 |
6,016 |
その他 |
4,182 |
4,174 |
4,102 |
3,733 |
計 |
26,647 |
24,281 |
24,550 |
24,737 |
経 常 支 出 |
人件費 |
13,105 |
13,066 |
13,243 |
13,450 |
経費 |
10,511 |
10,368 |
10,985 |
11,482 |
減価償却費 |
1,255 |
1,252 |
1,201 |
1,367 |
支払利息 |
9 |
7 |
5 |
12 |
その他 |
396 |
296 |
116 |
238 |
計 |
25,276 |
24,989 |
25,550 |
26,549 |
営業損益 |
△2,693 |
△7,087 |
△7,225 |
△7,803 |
経常損益 |
1,231 |
△815 |
△1,188 |
△1,981 |
累積欠損金 |
△31,705 |
△32,901 |
△34,595 |
△36,576 |
地下鉄事業.
地下鉄事業(百万円) |
元年度 |
2年度 |
3年度 |
4年度 |
経 常 収 入 |
運輸収益 |
82,819 |
58,320 |
63,210 |
67,168 |
一般会計補助金 |
5,465 |
4,398 |
3,957 |
3,142 |
その他 |
11,190 |
10,380 |
10,011 |
10,510 |
計 |
99,474 |
73,098 |
77,178 |
80,820 |
経 常 支 出 |
人件費 |
26,305 |
26,562 |
26,356 |
26,633 |
経費 |
22,525 |
22,139 |
23,604 |
23,147 |
減価償却費 |
24,014 |
23,842 |
23,916 |
24,154 |
支払利息 |
6,245 |
5,307 |
4,410 |
3,763 |
その他 |
4,456 |
3,000 |
2,992 |
3,568 |
計 |
83,545 |
80,850 |
81,278 |
81,265 |
営業損益 |
12,188 |
△11,330 |
△8,265 |
△4,220 |
経常損益 |
15,054 |
△8,689 |
△5,280 |
△1,561 |
累積欠損金 |
△199,040 |
△208,065 |
△213,845 |
△215,406 |
以下の内容は,コロナ禍以前に立案された交通局の「経営計画2023」を参考に,平成31年1月に執筆した記事です.
コロナ以前の市営交通の経営環境は好調で,『このまま推移すれば20年後には民営化も十分ありえる.』と考えていました.
コロナ以前の世界の記録ということで,記事を残しておきます.
「経営計画2023」に基づく市営交通事業を取り巻く環境 |
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平成31年3月策定「名古屋市営交通事業経営計画2023」に記載されている利用動向等分析を紹介します.
名古屋市の人口は,高齢者の死亡数増加と出生数の減少により,平成25(2013)年から自然減となっており,今後拡大していくと考えられます.
一方で,社会増減は,他地域からの転入超過がしばらく続くものと想定されています.
その結果,今後の常住人口(2,314千人:H29)は,短期的には増加が続くものの,令和4(2022)年頃の2,323千人をピークに,自然減が社会増を上回り,減少に転じると予測されています.
また,人口構造は少子高齢化の傾向がさらに進むと予測されています.
昼間人口は,周辺市町村の人口減少に伴い,常住人口より早く,令和2(2020)年頃の2,612千人をピークに,減少に転じると予測されています.
交通局では,「経営計画2023」において,2019(令和1)年〜2028(令和10)年までの10年間の地下鉄・市バスの乗車人員の推計値を公表しています.
上記のように昼間人口は減少すると予測されていますが,この地方の製造業を中心とした好調な景気動向や,リニア中央新幹線開業による交流人口の増加なども加味して,乗車人員は当面は増加するものの,2027(令和9)年頃以降は,地下鉄は同水準で推移し,市バスは減少に転じると見込まれています.
「経営計画2023」に基づく地下鉄・市バスの収支見通し |
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交通局では,「経営計画2023」において,2019(令和1)年〜2028(令和10)年までの10年間の地下鉄・市バスの収支計画を公表しています.
このうち,過去の損失額(赤字額)の累積である「累積欠損金」に着目し,2028(令和10)年より先の地下鉄・市バス事業の動きを予測します.
地下鉄事業では,2018年度に2,154億円の累積欠損金が見込まれています.
「経営計画2023」では,これを毎年約100億円ずつ削減し,計画期間内の2023年度には1,560億円まで削減する目標としています.
さらに長期的な展望として,2028年度には957億円にまで削減見込みであるとしています.
その先の推移について,2018年度から2028年度までの公表値を元に単回帰分析で推計したグラフが次の通りです.
現在と同じ水準で累積欠損金を削減すると,2036年度には解消する見込みです.
2018年4月,日本で最も歴史のある公営地下鉄であった大阪市営地下鉄が民営化されました.
大阪市は他都市の地下鉄事業より早く,2003年度には経常黒字に,2010年度には累積欠損金を解消し余剰金を計上していました.
名古屋市など他都市の公営地下鉄がこれに続くかどうかは,大阪市の成功が試金石になると思われますが,いずれにせよ,累積欠損金を解消もしくは解消見込みである都市においては,民営化の議論が本格化することでしょう.
名古屋市においては,2036年度頃に累積欠損金を解消するとなった場合,その前後の市長選挙(前回2017年から4年周期とした場合は2033年もしくは2037年)において,どのような公約の候補を市民が支持するのか.その時の市民の判断によって,市営交通の未来が決まるのではないでしょうか.
市バス事業では,2018年度に350億円の累積欠損金が見込まれています.
「経営計画2023」では,これを毎年少しずつ削減し,計画期間内の2023年度には332億円まで削減する目標としています.
さらに長期的な展望として,2028年度には309億円にまで削減見込みであるとしています.
その先の推移について,2018年度から2028年度までの公表値を元に単回帰分析で推計したグラフが次の通りです.
現在と同じ水準で累積欠損金を削減すると,解消は2110年代(約90年後)となる見込みです.
市バス事業の累積欠損金は,解消の当面の見込みはありませんが,地下鉄事業に比較すると少ない金額です.
また債務超過額は,2018年度は16億円ですが,2021年度には解消する計画となっています.
債務超過も解消し,安定的に経常黒字を出すことのできる市バス事業においても,地下鉄事業と合わせた民営化議論は避けることができないのではないでしょうか.
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