まるはち交通センター
 トップページ市バス路線一般系統紹介高速1号系統
市バス路線
 
コンテンツTOP
常設系統の紹介
 一般系統紹介
  名古屋駅関連系統
  栄駅関連系統
  金山駅関連系統
  東山線(東部)系統
  東山線(西部)系統
  名城線(北部)系統
  名城線(南部)系統
  名港線沿線系統
  鶴舞線沿線系統
  桜通線沿線系統
  その他系統
  出入庫系統
  地域巡回(北)
  地域巡回(南)
  C758号系統
  観光ルートバス
  深夜バス
 
▼廃止路線
  高速1号系統
  
 基幹バス
 ゆとりーとライン
 トピックス
 各種データ集
臨時輸送・貸切輸送
 急行・臨時バス
 迂回運行の記録
 市バス貸切輸送
バス停・関連施設
 営業所(車庫)
 バス停図鑑
 終点の風景


 かつて高速道路経由で運行されていた路線バス「高速1号系統」を紹介します.

概要 高速1号系統「栄〜森の里団地」

 高速1号系統は,昭和54年の名古屋高速道路(高辻〜大高間)開通に合わせ,翌年昭和55年(1980年)2月15日に運行開始しました.
 当時は
高速1号系統(栄〜森の里団地)に加え,高速2号系統(栄〜緑高校)も開設されましたが,高速2号系統は基幹1号系統開設と同時(昭和57年)に廃止されています.

 都心部から地下鉄のない郊外(名鉄・JR沿線)を直接結ぶ長距離路線であり,路線距離は通常の3倍ほどで,市バス最長路線でした.
 このため運行効率が非常に悪いこと,ラッシュ時を中心に需要が片方向に偏る(午前は都心方向,午後は郊外方向)こと,累積赤字が積み上がり改善の余地が見込めないことから,
令和4年(2022年)4月1日の運行をもって廃止されました.

 立席OKな一般路線バス車両が,名古屋高速道路(高辻〜大高間),自動車専用道(大高〜有松間)を走る全国的に見ても珍しい路線でした.

 

 

路線図/運行概要

 高速1号系統は,開業時より栄〜森の里団地間のみの運行です.

 森の里団地(回転場)を主な待機場所とし,栄まで往復するダイヤが組まれました.
 出入庫は鳴尾営業所〜森の里団地間の回送です.
 朝ラッシュ時は都心(栄)行き,夕ラッシュは郊外(森の里団地)行きに需要が集中するため,平成16年からは片道を高速1号系統として運行し,栄から鳴尾営業所までは基幹1号系統として出入庫する混成運用も行われていました.

 

 晩年の運行間隔は,平日昼間と土休日は60分間隔で,平日朝ラッシュ時は15〜25分間隔,夕ラッシュ時は30分間隔でした.

 (令和3年10月現在)

系統記号 起点 経由 終点 路線長 所要時間
高速1 有松町口無池 森の里団地 24.7km 72分

系統記号 平日 日曜休日 備考
往路 復路 往路 復路
高速1 20本 20本 14本 14本  

 運行担当は,鳴尾営業所です.

担当営業所 鳴尾 営業係数(H30) 145 H10再編前系統記号 高速1

 


▲往路(森の里団地行)路線図の例

▲復路(栄行)時刻表の例


▲運転士用時刻表の例(画像提供/Gさま)
 

 

 

沿線風景

 高速1号系統の栄〜有松町口無池〜森の里団地間の風景を紹介します.

 栄(起点)

 起点は名古屋の中心市街地「栄」です.
 平成31年3月までは「噴水南バスターミナル」を発着していましたが,現在は「オアシス21」周辺の路上停を起点としています.


▲始発停は「栄」20番のりば

▲テレビ塔を背景に


▲「栄」20番のりば
 高速道路経由の文字なし


▲かつての起点 栄噴水南BT

 

 

 栄〜高辻出入口(都心部一般道)

 高速1系統は栄から高辻出入口まで都心部の一般道を走行します.
 途中停留所9箇所にも停車し,短距離の乗降も可能です.

 経路は栄〜矢場町〜上前津〜鶴舞公園前で,商業施設が集積する栄南エリアや大須エリアからの利用も可能です.
 利便性が高い一方で,交通量の多いエリアのため,都心部の渋滞に巻き込まれることもあります.

 運行開始当時の名古屋高速道路は高辻出入口以南のみ開通しており,高速系統も必然的に高辻出入口経由となりました.
 現在,名古屋高速道路は都心部に直結しており,速達性を高めるのであれば,より都心に近い出入口経由とすることもできますが,開業以来,高速1号系統の経路変更は行われていません.

 

 起点の栄停を発車したバスは,商業施設が建ち並ぶ大津通を南下します.
 この区間は往復で経路が異なっており,栄行のバスは久屋大通(100m道路)を北上します.

 矢場町交差点からは往復路が合流し,上前津交差点まで大津通を走ります.
 この間,片側3車線以上の幅広道路ですが,交通量や交差点数が多いこと,路上駐車や沿道駐車場の入手庫車両が多く着停しにくい等,ノロノロ運転になりがちです.

 上前津交差点から鶴舞公園前まで東進し,鶴舞公園前からは名古屋高速道路の下を基幹1号系統とともに走ります.


 

▲白川通大津付近
 イルミネーションに彩られた大津通を走る


▲JR中央線・鶴舞線と交差する鶴舞公園停

 

 

 

 高辻出入口〜大高出入口(名古屋高速道路)

 往復とも名古屋高速道路高辻出入口を利用しますが,出入口設置位置の関係上,高速1号系統の森の里団地行は円上停まで,栄行は1つ手前の東郊通三丁目停からの停車となります.

 円上停を発車した高速1号系統は,それまでの都心部ノロノロ運転の鬱憤を晴らすからの如く一気に加速し,第一車線から第三車線に車線移動.
 高辻交差点を通過し,高辻出入口の料金所をETCで通過,合流路の上り坂を駆け上がります.


▲名高速高辻入口付近(高辻交差点)
 第一車線から第三車線へ

▲高辻入口から名高速へ


▲名高速高辻出口より一般道に流出する高速系統
 右に円上停があるが,高速出口から近すぎて立寄れないので,次の東郊通3停より停車する
 

 

 片側2車線の高架道路,名古屋高速道路3号大高線(高速道路本線)に右側から合流した後は,大高出口まで,左側車線を法定速度上限の60km/hで快走します.
 高速道路走行距離9.9km,約10分のプチ旅行です.


▲円上の次は約15km先の有松町口無池
 (画像提供/Gさま)

▲高速道路区間
 (画像提供/Gさま)


▲名高速3号大高線を南下する市バス


▲同左


▲名高速3号大高線を南下する市バス


▲同左


▲60km/hを遵守して走る


▲高速道路を走るCNG車

 

 

 大高出入口〜有松IC(国道23号線 自動車専用道)

 名古屋高速道路は大高出口までの利用ですが,その先の国道23号線(名四国道)は片側3車線の自動車専用道路となっており,高速道路区間が引き続き続いているような感覚です.
 上空の高架道路は伊勢湾岸自動車道です.

 大型車等の交通量の多い道路を,引き続き60km/hをキープしながら走ります.
 走行距離約3km,約3分の道程です.

 

 自動車専用道を有松ICで流出し,一般道へ進みます.
 有松ICから最初の停留所である有松町口無池停まで,一時的に大府市に入ります.


▲一時的に大府市を経由する

▲有松ICから自動車専用道に流入する

 

 

 有松町口無池〜森の里団地(郊外一般道)

 有松町口無池停から先は,名古屋市最南端の昔ながらの住宅地域をのんびりと走ります.
 道路も,これまでの高規格道路とは一転して,幅員の狭い歩道無し片側1車線道路となります.

 都心部からの乗客を,住宅地でこまめに降ろしながら,約6kmの道程を約25分かけて終点の森の里団地まで走ります.
 経路上に区役所もあり,地域内の移動手段としての役割もあります.


▲有松町口無池停(移設前)
 歩道のない幅狭道路が続く


▲桶狭間地区を走る
 (画像提供/Gさま)


▲同左
 (画像提供/Gさま)


▲終点の森の里団地(回転場)


▲森の里団地停に栄行が停車中

 

 

乗り方

 基本的には,他の市バス路線と同じ,前乗り・中降り,料金前払い方式です.
 異なる点は,名古屋高速区間利用の際は,運賃のほかに「高速区間の利用料金10円」が別途必要です.

 開業時の高速道路通行料(大型車800円)を車両定員(約70名)で除した約10円.
 その後高速道路通行料は最大1,570円まで値上がりしましたが,見直しはありませんでした.

 

 市バス料金箱は「高速モード」が設定できるようになっており,高速1号系統で運用される車両がこのモードを使用します.
 「高速モード」では,料金設定が220円(運賃210円+高速料金10円)になっており,ICカード乗車券では自動で220円が引き落されます.
 定期券,一日乗車券,ドニチエコきっぷで乗車する場合は,別途10円の支払いが必要です.

 なお,高速1号系統では高速道路を含まない一般道区間のみの短距離利用も可能です.
 この場合は,料金を支払う前に乗務員へ申告し,高速モードを一時解除する必要があります.
 申告しない場合は,自動で220円が引き落されます.

 高速道路が通行止めで一般道迂回運行となる場合は,高速道路利用料金10円は不要となります.


▲高速1号系統の車両 前乗り・先払い

▲バス停掲出のご利用案内・料金案内


▲高速モード時の料金表示
 初期設定で高速料金10円が上乗せされている
 (運賃200円時代のもの)
 
運賃210円時代の画像


▲料金箱設定ボタン(運転士操作部)

 

 

車両

 高速1号系統は名古屋高速道路を走行します.

 名古屋高速道路の名前は「高速道路」ですが,法律上は「自動車専用道路」で,法定速度制限も60km/hです.
 このため一般路線バスと同じく立席利用も可能で,一般路線と同じ車両が使用できます

 とは言え,連続して高速走行することから,鳴尾営業所には高速仕様の車両が配属されています.

 現在の「高速仕様」車
  (一般仕様にはない装備品)

 
 ・座席シートベルト装着
 ・ABS(アンチロックブレーキシステム)装着
 ・エンジンルーム火災警報装置装着
 ・ETC装着


▲客席シートベルト装着

 

 当初は高速専用車両は無く,一般車に座席ベルトを取り付けるなどして対応してきましたが,
 長距離路線であり都市高速を経由することから着席乗車への要望が強く,平成9年度末に長尺車体を採用して座席数を増やした高速専用車両8両(F517〜F524)が投入されました.


▲初代高速専用車両(平成9年度式)

▲高速1号系統の側面方向幕

 

 平成18年3月ダイヤ改正では,一部便をノンステップ車指定ダイヤとし,万博輸送を終えたCNGノンステップ車6両(NH60〜NH65)による運用も始まりました.


▲CNGノンステップ車(平成16年度式)
 

 

 さらなるバリアフリー化のため,平成21年度末には二代目高速専用車両8両(NH227〜NH263)が投入され,平成22年4月改正より全便ノンステップ車としています.

 なお,高速1号系統には上記高速仕様の車両が主に使用されますが,高速仕様でなければ高速道路を走れないという条件は無いため,車両運用の都合でその他車両が起用されることもあります.

 平成16年からは基幹バス(基幹1号系統)との混成ダイヤも始まったことから,基幹バスと一般バスとの識別のため,車体前面と前扉横に「基幹バスプレート」が装備されました.
 高速1号系統やその他一般路線で運用する際は無表示で,基幹バスとして運用する際は「基幹バス」を表示して走ります.
 ※「基幹バスプレート」は高速仕様車の他に基幹予備車も装着しています.

 「高速専用車」「高速予備車」「(高速車ではない)基幹予備車」の車両リストは,
  
市バス車両>車両配置・移動>車両配置一覧表>鳴尾営業所をご覧ください(PDFファイル).


▲2代目(現行)高速専用車両(平成21年度式)

▲座席シートベルト付き


▲高速予備車の例
 (画像提供/Gさま)


▲高速予備車の例
 (画像提供/Gさま)


▲基幹バスプレートの使用例


▲基幹バスプレート/バスマスク

 

 

令和4年(2022年) 路線廃止

 高速1号系統は,令和4年(2022年)4月2日ダイヤ改正で,42年間の歴史に幕を閉じました.

 路線距離が長く運行効率が非常に悪いこと,高速料金10円では高速通行料金も賄えないことから,毎年赤字収支であり,運行開始以来の累積赤字額は50億円にもなっていました.

 廃止のきっかけは,コロナ禍による利用者大幅減少です.
 令和2年度決算では高速1号系統単体で8,500万円の大赤字となりました.

 これが「一般系統」や「地域系統」であれば,地域住民の足を守るべく赤字でも運行継続されるところですが,交通局の路線区分上では,高速1号系統は都心ループバス等と同じ「特定需要」系統です.
 (かつての「なごや城ループバス」も赤字で他の代替手段もあることから早々に廃止されました.)
 特定需要系統を大赤字の状態で運行継続するには,『なぜ有松・大高地区のみ高速系統が必要なのか』大義名分が必要です.

 かつての有松・大高地区は交通手段が貧弱で,高速1号系統は重要な都心アクセス手段でした.
 近年はJR南大高駅の開業や名鉄鳴海駅・有松駅駅前広場整備に伴う市バス路線乗入れなど,民間鉄道を基幹とした地域公共交通網の整備が進められてきました.
 このように,地域における高速1号系統の役割が相対的に低下していったことに加え,令和4年2月からは高速1号系統と並行して走る民間鉄道にも名古屋市敬老パス利用範囲が拡大されたことがダメ押しとなりました.

 

 路線廃止にあたっては,緑区沿線学区への事前説明が1月下旬に始まりました.
 沿線住民の反発は大きく,2月14日に桶狭間・南陵・有松3学区区政協力委員長連名で廃止撤回の要望書が提出され,2月28日には有松商工会からも廃止撤回のお願いが提出されました.
 廃止撤回・存続を求める署名活動も,桶狭間学区の請願署名,森の里荘自治会・町内会連名の陳情署名など,各地区で行われました.人口約1万2千人の桶狭間学区では,住民の約半数となる6,054筆が短期間で集まりました.
 その他沿線の署名活動も含めると,1万筆を超えたとの情報もあります.

 このように地域住民から愛されてきた路線ではありますが,バスは住民の想いだけでは走りません.
 バスは人件費と燃料費で走ります(高速1号系統の年間経費は車両減価償却費含め約1億8千万円).
 どれだけ署名が集まっても,十分な運賃収入が伴わなければ意味がありません.

 署名した1万人超が日常的に利用していれば,満員御礼・増発・路線収支も多少は改善し,路線存続の道もあったと思いますが,現実はそうはならず.
 名鉄バスの近距離高速バス高針線のように運賃500円でもよいとの収支改善提案がある訳でもなく.
 (仮に収支に見合う料金設定とした場合,相当高い運賃になると思われ,鉄道乗継より高額で遅い路線になってしまうと思われますが・・・)

 (特定需要系統だけれども黒字化するほどの需要はないが,一般系統のように)ただ単に路線存続してくれと要望するだけ(=乗って残そうともしない,追加負担もしないけど,自分達の地域の為だけに赤字を垂れ流し続けてくれ)では,取り繕う余地もなく,予定通り廃止となりました.

 

 高速1号系統が廃止となった令和4年4月ダイヤ改正では,敬老パス利用拡大と新たな道路開通もあり,緑区大高・有松地区において路線再編成が行われました.
 高速1号系統廃止によって捻出された事業量(車両8両分・人員)を使って,路線空白地区への市バス路線新設,民間鉄道駅(JR南大高駅,名鉄鳴海駅,名鉄有松駅)アクセス路線の本数の増加など,地域公共交通網の強化が行われました.

 いつまでもあると思うな親と赤字路線


▲栄バス停に掲出された廃止告知文

▲廃止告知文


▲令和4年春 最後の桜と共に
 (画像提供/Gさま)


▲満開の桜に見送られる高速1号栄行き
 (画像提供/Gさま)


▲令和4年4月1日 栄21:55発最終便


▲栄を発車する高速1号系統最終便(NH271号車)

 

 

▼もどる 

 (C) まるはち交通センター製作委員会