名古屋市が導入を目指す「新たな路面公共交通システム」の概要を紹介します.
SRT「新たな路面公共交通システム」導入検討の経緯 |
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令和5年2月時点の情報です. 順次情報を追加していきます.
これまでの検討の経緯を簡単にまとめます.
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平成23年9月 (2011年) |
「なごや新交通戦略推進プラン」策定 名古屋の広い道路空間を人が主役の空間へと転換することで,新たな交流社会を創出する「みちまちづくり」をリーディングプロジェクトとして提唱. |
平成26年9月 (2014年) |
「なごや交通まちづくりプラン」策定 「みちまちづくり」を具体化するための実行計画. 「道路空間の主役転換」「自動車の都心部への集中緩和」「移動手段の多様化」を取り組みの3本柱として一体的に進めることとし,「移動手段の多様化」における主要施策として,都心部における新たな路面公共交通システム(LRTやBRT)の導入検討を位置づけ. |
平成29年3月 (2017年) |
「新たな路面公共交通システムの導入に係る基本的な考え方」策定 従来のLRTやBRTの優れた点をあわせ持ち,「わかりやすさ」「使いやすさ」「楽しさ」を備えた最先端で魅力的なタイヤベースシステムの導入を検討する方向性を提示. |
平成31年1月
(2019年) |
「新たな路面公共交通システムの実現を目指して(SRT構想)」策定 新たな交通システムの特性を表す概念「Smart Roadway Transit」を提唱.
実現を目指すシステムの姿を示した構想を策定. |
令和2年10月 (2020年) |
「連接バス」「燃料電池バス」試験走行 |
令和4年9月 (2022年) |
「連接バス」試験走行・一般試乗体験あり |
令和5年1月
(2023年) |
「SRTの段階的な導入の進め方」公表 当初運行の早期事業化をはかるとともに,路線の段階的な拡充を目指す. 「1当初運行」「2アジア大会開催時」「3リニア開業以降」 |
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【背景】
リニア中央新幹線開業やインバウンドの増加,少子高齢化の進行により,都市間競争が激しくなっている.
市では,名古屋城木造復元,名駅や栄など公共空間の再編再生に取り組んでいる.
【システム導入の目的】
都心の魅力ある地域をつないで回遊性を高め,賑わいを面的に拡大する.
【名古屋のまちの特性と回遊性向上に向けた課題】
自動車中心の広い道路空間が,人の流れや賑わいを分断している.
→人が中心の歩いて楽しい道路空間を創出する.
リニア開業等により来訪者が増える見込み.
地下鉄東山線(名古屋〜栄間)の混雑が発生している.
地下鉄でアクセスしづらい魅力ある地域が存在している.
→必要な輸送力を確保し,魅力ある地域等を行き来しやすくする.
地下鉄の上下移動や乗換は旅行者や高齢者等の負担となる.
目的地まで移動しながら,まちの賑わいを感じたり風景を楽しめたりすることも重要.
→ストレスのないサービス提供と,来訪者を魅了するような移動手段とする.
【BRT等ではなくSRTとする理由】H29年「基本的な考え方」より
LRT,BRTとも一長一短であること.
モード |
優れた点 |
名古屋市に導入した場合の欠点 |
LRT |
専用軌道を有し,視認性や定時性,快適性に優れる. |
既存軌道がないため,大規模な道路インフラ改変含,初期投資が大きく自動車交通への影響も大きい. |
BRT |
経費や工期縮減,自動車交通の状況やまちの変化に合わせた柔軟な対応が可能. |
LRTと比べ,存在感や快適性において十分ではない. |
名古屋は,自動車をはじめ,ものづくり産業が集積する中部の中心都市であること.
これまで基幹バスやガイドウェイバスなどの先進的なバスシステムの導入を進めてきたこと.
(これら既存システムとの連携など将来的なシステム拡張も念頭にある.)
これら地域特性を踏まえて,上記表のLRT及びBRTの優れた点である「わかりやすさ」「使いやすさ」「楽しさ」を持ち合わせつつ,先進技術を積極的に採用するなど「成長性」のある,名古屋ならではの「革新的で魅力的なタイヤベースシステム」を目指すこととなった.
SRT「新たな路面公共交通システム」の特徴とコンセプト |
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魅力あるまちをシームレスにつなぎ,走る空間が豊かなまちの景観を生み出し,また,ストレスフリーで楽しい移動を提供する,新たな都市のシステム.
その実現のため,車両,走行空間,乗降・待合空間や運行サービスが相互に連携し,一体的に機能する.
(1)みちの再生による都心の魅力向上
・公共交通が利用しやすく,歩いて楽しい道路空間に生まれ変わる.
・快適にくつろげる待合空間が,まちの情報スポットになる.
・SRTがまちの風景に溶け込み,歩道や沿道の建物と一体的な賑わいを生み出す.
(2)地区間の連携を強化する基幹公共交通
・行きたい場所まで迷うことなく,待たずに行くことができる.
(3)まちを訪れる人に新しい移動価値を提供
・まちの賑わいや移ろいを楽しみながら移動できる.
・自動運転などの新しい技術で,乗り心地が良くスムーズに乗降できる.
「新たな路面公共交通システム」は,従来のLRTやBRTと異なり,先進技術による快適な乗り心地やスムーズな乗降,洗練されたデザイン等のスマート(Smart)さを備え,路面(Roadway)を走ることでまちの回遊性や賑わいを生み出す,今までにない新しい移動手段(Transit)であることから,その特性を表す概念として,「SRT」と呼称しています.名古屋市が独自に命名したシステムです.
SRTシステムの具体像 |
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平成31年「新たな路面公共交通システムの実現を目指して(SRT構想)」策定時点の,SRTコンセプトを踏まえた,最終的に目指すシステム像です.
【目指すシステム像】
まちなかでの存在感やシンボル性があり,誰もが安心して快適に乗車できる先進的な車両を新たに開発して導入する.
【方針】
▼広い車内と魅力的な車両デザイン
→(例)連接バス
▼スムーズな乗降と快適な乗り心地
→(例)正着制御や自動運転機能
▼環境にやさしいエネルギー
→(例)燃料電池車両
【目指すシステム像】
道路利用者の安全性や利便性に考慮しながら,存在感があり,スムーズで快適な走行環境を創出する.
【方針】
▼存在感と快適性の確保
→(例)レーン着色等の路面表示,専用レーン化
▼様々な道路利用者を考慮した空間配分
→(例)公共交通の優位性を高める運用
【目指すシステム像】
利用者がスムーズに乗降でき,快適に待てる空間とするとともに,歩道との一体性を高め,まちの情報案内機能を備えることで回遊性や賑わいを創出する.
【方針】
▼まちの回遊拠点としての機能
→(例)デザイン性が高い上家や待合用ベンチ,デジタル案内板
▼スマートな発着とシームレスな乗降
→(例)歩道の前だし,車両と乗降待合空間の段差解消
【目指すシステム像】
魅力ある地域をつなぎ,賑わいを面的に拡大する運行ルートの設定及び乗降・待合空間の整備を行う.
【方針】
▼東西ルート及び周回ルートの設定
→(例)下地図参照
→都心2大拠点(名駅・栄)を結ぶ東西ルートを優先して導入する
▼沿道の賑わいと連携した乗降・待合空間の整備
→停車車両の影響を受けにくく,賑わいの拡大につながるテラス型の乗降・待合空間を検討
▼新たな都心軸の明確化
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【目指すシステム像】
通勤や買い物による移動,観光やビジネスでの利用など,都心における幅広い移動に,誰もが気軽に利用できる運行サービスを提供することで,まちなかでの回遊行動を促進する.
【方針】
▼基幹的な路線としての高いサービス水準
→(例)運行間隔は10分以内
▼料金抵抗の少ない料金サービス
→(例)均一料金,ICカード乗車券,敬老パス適用
▼車内移動の少ないスムーズな乗降方式
→(例)複数扉からの乗降,乗降待合空間での乗車券発売
※SRTは,名古屋市住宅都市局がまちづくりの観点から進めている事業であり,交通局の事業ではありません.現時点では,運営主体や運行主体は決まっていません.既存市バス路線との役割分担や料金制度等の調整も決まっていません.
【目指すシステム像】
歩道の賑わいづくりと一体的に整備することや、ハードソフト両面において、従来の公共交通を超える水準を備えることが特徴.
まちづくり単独や交通事業単独では得られない相乗効果を生み,回遊性向上や賑わい創出を図っていく新しい形の事業であることから,両事業を一体的に進めていくための新たな枠組みを構築する.
【方針】
▼まちづくりと交通事業の適切な役割分担
→(例)まちづくりと交通事業の複合により効果を発揮,民間活力の活用
SRT導入の進め方(令和5年1月公表) |
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これまでに行った社会実験やアンケート等の結果を踏まえ,令和5年1月に今後の事業の進め方が公表されました.
・リニア中央新幹線の開業による交流人口の増加を見据え,都心部のさらなる活性化を促進するとともに,誰もが快適に移動できる最先端モビリティ都市の実現のためSRTの導入をはかる.
・都心部のまちづくりと連携し,まちのシンボルとなるSRTを導入することで,相乗効果を発揮し,さらなる賑わいを面的に拡大する.
・社会実験による検証を踏まえつつ,当初運行の早期事業化をはかるとともに,将来的には,自動運転技術など新しい技術・機能の実装も視野に入れながら,路線の段階的な拡充を目指す.
令和5年1月に名古屋市が公表した「進め方」は次の通りです.
【第1段階】当初運行時
・都心の中で特に移動が多い名古屋駅〜栄間の「東西ルート」からSRTを導入
・周辺で大型の開発が進み,沿道に店舗などが集積している広小路通を経由
・外観のシンボル性や車内の快適性を備えた連節バスを運行
・停車車両等の影響を受けにくく,賑わいの拡大につながるテラス型の乗降・待合空間を検討
▼令和5年度予算事項
新たな路面公共交通システムの導入準備 99,120千円
・令和6年度に導入する連節バスの発注
・名駅〜栄間のテラス型乗降待合空間の社会実験

【第2段階】アジア・アジアパラ競技大会開催時
・国内外から多くの来訪者があることを見据えて,第1段階の当初運行ルートでの効果や課題を検証しながら,事業規模の拡大を検討し,名古屋駅駅前広場の整備状況にあわせた発着や「周回ルート」の一部実現を目指す
【第3段階】リニア開業以降
・リニア中央新幹線開業時には,来訪者が名古屋駅からSRTを利用し都心部の各拠点へ快適に移動できるように導入を図る
・先行して導入したルートでの効果や課題を検証しながら,最適な都心部周回ルートの形を目指す
(以下の記載内容は,R5年1月公表事項ではなく,以前より列挙されている課題です.)
・先進的な車両の開発,新しい技術開発の動向に対応.
・走行空間や乗降・待合空間の整備による自動車交通への影響.
・都心で運行する既存公共交通との関係などの調整.
など.
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