ゆとりーとライン(ガイドウェイバス)専用車両を紹介します. ガイド車輪や走行装置類など,普段は見ることのできない部分もクローズアップ!
(1) 専用車両と特殊装備(案内輪や走行装置類) |
|
ガイドウェイバスシステムでは,ガイドウェイが敷設された専用軌道を走行するため,専用の車両が必要です.
名古屋ガイドウェイバスでは,普通の路線バスに案内輪など特殊装置を取り付けた専用車両を運用しています.
専用軌道を走行するため,車両に取り付けられた特殊な装置を紹介します.
ガイドウェイバス車両には側方案内装置としてガイド車輪が前後に付いています.
前部案内輪は横幅2,500mmで,車両最大幅を越えるため可動式となっており,一般道走行時は格納します.
後部案内輪は横幅2,475mm(旧車は2,460mm)で支障しないため固定式です.
直線での走行時は常に前部案内輪のみがガイドウェイに当たっており,後部案内輪は曲線走行時のみ使用します.
可動式の前部案内輪を人間の腕に例えると,前部走行車輪の内側に,車輪と平行の状態で人間の二の腕にあたる部分が固定されています.
稼働するのは肘より先の部分で,180度動きます.そして肘を90度に曲げて,手のひらを広げた状態(案内輪の大きさ)が案内輪を展開した状態と同じです.
この前部案内装置は三菱が開発し製造しているため,日野製車台であっても三菱のアクスルを採用しており,前輪ホイールハブには三菱マークが入っています.
▲前部案内輪 前輪の内側に固定されており,先端が180度回転する |
▲右側の前部案内輪を下から撮影 |
▲後部案内輪(固定式) |
後部案内輪は固定式です. 車体幅以内に収まるように装着されています.
案内(ガイド)役を務めるのは前部案内輪で,後部はカーブ走行時用という違いがあります.
左の画像は試作車を撮影したものです. 融雪剤等散布口が付いています |
前部案内輪とガイドレール間には,左右合わせて50mmほどの隙間があります.このため一方のガイドレールに案内輪が強く当たると,その反動で反対側レールに当たるなどジグザグ走行となってしまい,乗り心地が大変悪くなってしまいます.
これを解消するために,前部案内輪には安定化装置が装着されています.
油圧によって常に案内輪をガイドレールにより抑えつける事で,片側のガイドレールにのみ沿って安定的に走るようになります.
▲安定化装置(油圧シリンダー) |
|
高架専用軌道区間は,左右にガイドレールが設置されており,一般道路のように追い越しすることができません.
では,高架区間で車両故障が発生し,バスが動けなくなってしまった時はどうするのか・・・
ガイドウェイバス車両には,鉄道車両と同じように車両同士が連結して走ることができるよう,車体前後に非常用の連結器が用意されています.
この場所に,駅に配備されている連結棒を差し込んで,高架区間外まで故障車両を後ろから押し出します.
▲車体後部の連結装置 |
▲駅ホーム部に配備されている連結棒 |
また,タイヤパンク時の対応として,前輪タイヤ内部に中子と呼ばれる鋼製輪が入っており,これで高架を転がって走行することができます.
後輪はダブルタイヤのため入ってません.
▲前輪タイヤ内部の「中子」 |
|
(2) 専用車両と保安装備(車内機器) |
|
ガイド車輪の操作盤や,高架専用軌道を走行するための保安装備など,ガイドウェイバス特有の運転席周辺機器を紹介します.
可動式の前部案内輪の操作盤は運転席回りにあり,運転士がモードインターチェンジ停車中に操作して車輪を展開・格納します.
旧車は運転席右下のスイッチパネルの中に操作レバー兼表示器が取り付けられていました.
新車では運転台の右側に大型のT形操作レバーが,左側に大型の表示板が設けられ,操作性や視認性が向上しています.
▲旧車 運転席右下パネル内の操作盤 スイッチと表示器が一体となっている |
▲新車 運転台右側の大型レバー式の操作する 運転台左側に表示器を設置し,常時監視が可能に |
高架区間は軌道法が適用されるため,「無軌条電車」の運転資格がなければ乗務することができません.
そこで,運転士が有資格者かどうか自動判定するため,乗務員ID確認装置がついています.
旧運行管理システムでは運転士氏名表示器と一体化したID確認装置が使用されており,この表示器兼ID確認装置に挿入すると,モードインターチェンジで自動判定が行われ,有資格者のみインターのゲートが反応するようになっていました.
新しいシステムではICカード化されており,運転士氏名表示器は別に取り付けられています.
▲旧システム用「車内名札」兼「ID確認装置」
前扉上に取り付けられていた |
▲新システムではIC化された 運行監視装置の側面にIC読取り部が見える |
高架区間における運転指令室と運転士の通信手段として,無線装置が搭載されています.
モードインターチェンジで自動で開局・閉局操作が行われます.
▲新車の場合,運転席右上に無線装置を取付け |
▲高架区間用無線装置・表示器 |
(3) 営業用車両ラインアップ |
|
ガイドウェイバスの車両は,道路運送法と軌道法が共に適用されます.
つまり「事業用自動車」であり,かつ「鉄道車両」であるため,自動車型式名のほか,鉄道型式名も持っています.
定期検査も,車検を受けると同時に鉄道車両としての検査も実施しています.
営業用車両は,平成13年(2001年)の開業時より活躍した第一世代と,更新のため平成25年(2013年)より導入された第二世代があります.
世代(登場年) |
第一世代(H13年) |
第二世代(H25年〜) |
車台メーカー |
三菱ふそう |
日野自動車 |
日野自動車 |
リフトなし 鉄道車両型式 |
11両製造 GB1000形 |
7両製造 GB2000形 |
なし |
リフト付き 鉄道車両型式 |
2両製造 GB1100形 |
5両製造 GB2100形 |
28両製造 GB2110形 |
自動車型式 |
KL-MP35JM改 |
KL-HU2PMEA改 |
HU8J (ベースはLJG-HU8JLGP) |
原動機の形式 |
6M70 |
P11C |
J08E-1M |
車両総重量 |
14,965kg |
15,349kg |
15,800kg |
総排気量 |
12,880cc |
10,520cc |
7,684cc |
全 長 |
10,750mm |
10,670mm |
10,525mm |
全 幅 |
2,490mm |
全 高 |
3,120mm |
2,970mm |
3,340mm |
ホイールベース |
5,200mm |
4,800mm |
動力伝達方式 |
GMアリソン製AT |
ZF製AT |
5速MT |
車輪ホイール |
スチール製 |
アルミ製 |
主ブレーキ |
空気油圧複合式ブレーキ |
空気式ブレーキ |
定員 |
(リフトなし)座席28人+立席45人 (リフト付き)座席26人+立席45人 |
座席24人+立席45人 |
床下に特殊装置を装備するため,低床化が困難であり,全車ツーステップバスとなっています.
平成13年(2001年)式の第一世代は,三菱ふそう製エアロスターと,日野自動車製ブルーリボンシティの2車種あります.
それぞれ中扉4枚折戸が標準で,一部に中扉2枚戸のリフト付き車両もあります.
平成25年(2013年)から導入が始まった第二世代は,日野自動車製ブルーリボンシティハイブリッド1車種のみです.
全車両が中扉リフト付き車両となっています.
|
第一世代 専用車両(25両) 平成13年〜平成25年 |
|
|
平成13年(2001年)の開業時に用意された車両(第一世代)は,4車種25両です.
すべてツーステップ車で,三菱ふそう車は13両,日野車は12両です.このうち中扉リフト装備は7両です.
運転開始から12年が経過し,第二世代車両によって平成25年(2013年)4月から平成26年(2014年)2月にかけて置換えられました.
車両写真など詳細は市バス車両>特定路線専用車(引退車種)をご覧下さい.
|
|
|
|
|
|
|
|
|
▲GB-1000型 三菱ふそうリフトなし |
▲GB-1100型 三菱ふそうリフト付き |
▲GB-2000型 日野自動車リフトなし |
▲GB-2100型 日野自動車リフト付き |
平成22年度から名古屋市が主体となって後継となる第二世代車両の開発が行われました.
当初はバリアフリーに対応した低床車両が検討されていましたが,床下に収納される案内装置や各種制御機器が支障するため,残念ながら現状では低床化は困難であるという結論となっており,第二世代車両もこれまでと同様のツーステップ車両となります.
平成25年(2013年)4月から平成27年(2015年)3月にかけて28両が導入されました.
当初想定では,12年更新を目標に令和8年度(2026年度)の次期システム導入と当車両の引退が計画されていました.
しかしながら,自動運転等の次期システム導入には時間を要することから,令和8年度以降の稼働(延命)も視野に検討されています.
車両写真など詳細は市バス車両>特定路線専用車(現役車種)をご覧下さい.
|
|
|
|
|
|
|
|
|
該当車種なし |
該当車種なし |
該当車種なし |
▲GB-2110型 日野自動車リフト付き |
(4) 業務用車両 |
|
保守用車など,名古屋ガイドウェイバス(株)が保有する非営業用車両を紹介します.
常時,本社車庫やその周辺に留置されています.
seq |
業務用車両種別 |
業01 |
試作車→融雪剤散布車 |
第二世代 |
業02 |
第一世代 |
業03 |
作業車 |
現在活躍中の第二世代車両(GB-2110型)の開発のため試作された車両です.
GB-2110型と同じく日野ブルーリボンシティハイブリッドのツーステップ車です.
初代試作車と異なり,白一色のシンプルな外観となっています.
平成24年に製造され,名古屋ガイドウェイバス本線を使用して夜間に試験走行を行い,各種データを集めました.
これを基に営業車(GB-2110型)が製造されています.
現在は,試作車(1000型)の後継となる事業用車両として,車両後部に融雪剤散布装置を設置し,主に積雪時に融雪剤散布のため出動しています.
高架区間専用事業用車となっており,公道を走らないためナンバープレートは付けていません.
常時,ガイドウェイバス本社車庫にて留置されています.
長年,方向幕部分はカラでしたが,令和5年頃に表示(方向幕1コマ)が入れられました.
▲名古屋ガイドウェイバス本社 |
▲本社1階にある車庫 |
▲白一色のハイブリッド試作車→事業用車 |
▲同左 |
▲後部より 車内後方に融雪材散布機を搭載 |
▲運転席の様子 |
▲車内に資機材を搭載して待機 |
▲車内後方の融雪材散布機 |
▲R5年頃?方向幕表示窓に社名を追記 |
▲同左 中扉付近 |
|
業02 初代試作車(1000型)→融雪剤散布車(引退済み) |
|
|
我が国で初となるガイドウェイバスシステムの導入にあたり,建設省を中心とした「ガイドウェイバス共同実験研究会」が製作した三菱ふそう製の試作車両です.白色に青とピンクのラインが入ったデザインで,側面には「THE GUIDEWAY-BUS 1000」と書かれています.
外観や車内は市営基幹バスと類似したデザインとなっています.
ガイドウェイバス志段味線開業後は,名古屋ガイドウェイバス本社車庫に留置され,車両後部に融雪剤散布装置を設置し,主に積雪時に融雪剤散布のため出動していました.
現在は退役済みです.
▲ガイドウェイバス初代試作車両 三菱ふそう製のもの(1000型) |
▲同左 |
▲営業車両と同じくガイド車輪機構付き |
▲視察者向けに営業車のスペックを側面方向幕枠に掲出 |
▲後部より |
▲同左 ナンバープレートは付いていない |
▲運転席側の側面 |
▲初代試作車 車内の様子 |
▲初代試作車 運転席の様子 |
▲ガイド車輪操作器等 |
▲運転席右側の無線機等 |
▲車内最後部に設置された融雪剤散布装置 |
試作車としては,この車両のほかに日野製の「THE GUIDEWAY-BUS 2000」という車両も存在しました.
三菱車,日野車とも同時に製作され,土木研究所や名古屋市内で試験走行を行いました.
日野製試作車については,先に廃車となっています.
一見すると普通のトラックですが,屋根をよくみると2種のアンテナ(緊急無線用・バスロケ用)が付いています.
この車両も,立派なガイドウェイ車両の一つです.
普通車サイズのため車幅が狭く,案内輪は付いていません.
クレーンを使用した作業など,施設メンテナンス等に使用されています.
▲専用軌道作業用トラック |
▲同左 |
▼もどる
|