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 名古屋駅バスターミナル
  → 市営地下鉄東山線,桜通線 ,JR東海道新幹線,東海道線,中央線,関西線,
      名古屋鉄道本線 ,近畿日本鉄道名古屋線 名古屋駅
  → 名古屋市中村区

名古屋駅バスターミナルの課題(平成29年4月開業時点)

 新「名古屋駅バスターミナル」は,2017年4月1日に開業しました.
 開業時点における,新「名古屋駅バスターミナル」の状況を一言で表すならば,”最強・最悪の役所”たるJR東海と,”何をやっても中途半端な事しかできない役所”たる名古屋市交通局がコラボした,「最強・最悪に中途半端なお役所的バスターミナル」であると感じました.
 その後,同年7月から順次改善が進められており,課題の多くは解決されています.

 名古屋駅では,2027年のリニア開業を見据え,2017年の新ビル&バスターミナル開業の事業量とは比べ物にならないくらい,広範囲での大規模な再開発が計画されています.
 その時に,バスターミナルと同じ轍を踏んでほしくない.そう強く願い,2017年4月1日時点での状況を記録しておきます.

 

 (1)のりば案内と路線案内が別々

 利用者がバスのりばを確認する時,「乗りたい路線が何番のりば」で「ドコにあるのか」を同時に探します.
 しかしながら,名古屋駅バスターミナルの場合,施設管理者たるJRが設置した「のりば番号案内」のみで,市バス路線案内の併記が無いなど,乗り入れ事業者のことは考慮されていません.
 開業時点では,JR設置の「のりば番号案内」の横に交通局作成のポスターを貼ることで対応していました.
 2017年8月に「のりば番号案内」の横,もしくは下部に「市バスのりば案内」が追加され,この課題は解決されています.


▲開業時点の様子
 施設管理者と乗入れ事業者の関係を象徴するかのような縦割り掲出物

▲改善後の様子
 「市バスのりば案内」を追加

 

 (2)中途半端な”総合”案内板

 上記課題に対し,交通局では総合案内板をBT内に3箇所設置したとPRしていました.
 (当初のプレスでは「総合案内板」と表記し,その後のプレスや案内には「市バス案内」と記載)
 しかしながら,施設管理者たるJRに配慮したのか,JRから辺鄙な場所しか充てがわられなかったのか,総合案内板の設置箇所が壁の窪みであったり,サイズが小さかったり,インフォメーションのサインも無く,初めてバスターミナルを訪れた利用者がその存在に気づくことは容易ではありませんでした.
 2017年8月にサインが追加され,改善しています.


▲開業時点の様子
 壁に隠れた総合案内板,自動販売機より目立たない,通路に飛び出たインフォメーションサインも無い

▲改善後の様子
 周囲に案内サインを追加

 

 そもそも,このような総合案内表示は,経路選択地点となるバスターミナル出入口近傍に設置されることが理想です.しかしながら,出入口近傍の一等地は,自社ビルを中心とした商業施設案内が設置されています.
 また他のバスターミナルでは総合案内板に集中掲出されている時刻表が,開業時点の名古屋駅バスターミナルでは無く,はるばる数百m離れたのりばまで出向かなければバス発車時刻を知ることができませんでした.

 これについても,2017年8月にバスターミナル出入口近傍に市バス時刻表が集中掲出され,課題は一応解決されています.
 理想を言うならば,バスターミナルの主要出入口には,自分で時刻表を探さなければならない固定表示より,各のりばにある液晶表示画面による時刻案内や,総合案内板が欲しいところですが.


▲開業時点の様子

▲改善後の様子 時刻表を追加

 

 (3)中途半端な誘導サイン

 JRゲートタワーは,1階のバスターミナルで南北の通り抜けが出来ない代替として,地上2階や地下1階の建物内通路で南北動線を構成する設計となっています.つまり地上1階だけでなく地上2階・地下1階を経由することが,バスのりばへの最短ルートとなります.
 しかしながら,最短ルートを案内する誘導サインはほとんど無く,既設サインに従って行動すると遠回りをさせられることがあります.

 地上2階や地下1階からバスターミナルに向かう場合は,地上1階の東側のりば(1〜6番)へ向かうルートと,西側のりば(7〜12番)へ向かうルートの2種類の経路を選択する必要がありますが,ビル内には「↑市バスターミナル」の文字があるだけで,市も出資していた旧ターミナルビルにあったようなのりば案内はありません.

 JRゲートタワー内に位置するバスターミナル降車所エリアの誘導サインも,自社ビルへの誘導サインが大きく,乗換利用者向けサインが小さく扱われています.
 これについては,JRビル内での対応になるためか,8月時点では改善されていません.


▲東側のりばに向かう場合はESで2階に上がることが最短経路になるが,遠回りになる直進ルートを案内するサインしか設置されていない例

▲EV案内はあっても,どこに行けるEVなのか表示は一切無い

 

 外部→バスターミナル方面の誘導サインもさることながら,バスターミナルから外部へ向かう誘導サインも,目立つのは自社ビル(JRタワーズとJRゲートタワー)への誘導サインで,肝心の各交通機関の案内は小さく扱われています.
 同じ市営交通として重要な地下鉄駅への誘導サインは,所々に「↑地下鉄」と記載されるのみで,場所が異なる地下鉄東山線と地下鉄桜通線が一括して扱われているため,誘導サインに従うと遠回り経路を進むことになります.

 このうち,誘導サインの一部(外部→BT,BT→外部)については,バスターミナル内の天井に設置された防煙たれ壁を利用して,2017年8月にサインが追加されました.


▲サインは自社ビルへの誘導が目立つ
 地下鉄は路線によって駅の場所が異なるが,誘導サインは1つのみ

▲降車所にある出入口の1つ
 地下鉄東山線に続く最短経路だが案内一切なし


▲8月に追加されたサインの1つ
 

 

 (4)夏季はサウナ状態

 バスターミナルは2つのビルにまたがって設置されており,ビル間は縁切りされているため,気密性が保てず,栄オアシス21バスターミナルにあるような空調設備が導入されていません.一方でバスターミナルの四方は壁で囲まれており,風が通り抜けることはありません.
 結果,夏場のバスターミナル内部は非常に暑く,そして風が無いので,サウナ状態となり,吹き出す汗に耐えながらバスを待ち続けることになります.うちわや扇子が必須です.

 これについては,2017年8月より,6番のりば付近と,9番のりば付近の外部に繋がる非常扉1箇所を常時開ける措置が取られたため,わずかながら風が通るようになりました.
 2018年7月には,6番7番のりば付近の窓ガラスをガラリ構造に変更する工事も行われました.

 2020年夏には,壁面数カ所に扇風機が設置されました.が,家庭用のため風が弱いこと,施設全体の気温が高く,熱風をかき回しているだけとなっています.

 2021年夏には,JPタワー側を中心(のりば1〜のりば9)に空調機がついに設置されました.
 空調機付近のみ冷風を感じることができます.

 2022年も,空調工事の予算が付いています.


▲6番のりば付近非常扉解放

▲結果的に外部と直接入退場できるようにもなった


▲9番のりば付近非常扉解放
 非常扉1箇所を常時解放することで,少し風が通るようになった


▲平成30年7月 窓ガラス部のガラリ化


▲令和2年 扇風機を新設
 


▲令和3年 空調機を新設


▲令和3年 空調機を新設

 

 (5)その他の課題

 ・バスターミナル内にベンチ一切無し.(JPタワー内に待ちスペースあるが,JR側に無し)
    →H29年7月にバスターミナル内に背もたれ無しベンチが設置されました.
    →H29年9月にバスターミナル内に背もたれ付きベンチが追加設置されました.
 ・のりば側にトイレ無し.(JPタワー内にトイレあるが,案内サイン無し)


▲6番のりば付近 当初はベンチなし

▲7-9月にベンチを追加設置した

 

 

私見

 前段で紹介した通り,名古屋駅バスターミナルは,車路と利用者空間が分離された,安全で衛生的な施設となっています.必要な乗降車バース数,待機バース,通路幅員も確保されています.施設管理者たるJR東海は,自動車ターミナル法や都市計画決定によるバスターミナル設置の義務に基づき,完璧なハコモノを作り上げたと評価することができます.ただし,そこに自社に直接的な利益をもたらすことの無い市バス利用者の視点があるかと言われると,疑問に思います.

 このような施設管理者ファーストなバスターミナルに仕上がることは,JR東海の社風から容易に想像できることであり,行政組織たる市と,乗入れ事業者たる交通局は,全てをJR任せにするのではなく,計画段階から利用者ファーストの視点を持って積極的に介入することはできなかったのか,と非常に残念に思います.
 名古屋駅はリニア開業を見据えた大改造も予定されています.
 今後,市バス利用者にとって使いやすいバスターミナルに改善されていくことを願っています.

 

 

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 (C)まるはち交通センター製作委員会