基幹バスで使用される車両を紹介します.
概要 基幹バスの専用車両 |
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昭和54年に提唱された「基幹バスシステム」は,従来の一般路線バスとは異なる基幹的交通機関として,車両についても『大型,多扉,低床車両を開発し,従来のバスのイメージを一新させる.』ことが提案されました.
また基幹1号系統は急行運転を,基幹2号系統は共同運行相手(名鉄)に合わせて中乗り後払いを採用しており,一般路線バスと差別化を図る必要がありました.
昭和57年の基幹バス開業にあたっては,次の点が考慮されました.
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(1)新しい感覚のデザインを取り入れ,カラーも明るい感じを強調.
→当時は金太郎塗装と呼ばれる地味な車両塗装であったため,基幹バスはアイボリー地マルーン色とした.
(2)当時の路線バス車両としては最大サイズとし,座席数を増加.
→当時は短尺(K尺)で1+1座席配列だったものを,標準尺(M尺)の2+1座席配列を基調とし,座席数を増加.シャンデリア風蛍光灯カバーを装着するなど内装も豪華に.
(3)これまでの低床・広扉仕様に加え,空気バネを採用し乗り心地を改善.
→当時リーフサスだったものを,エアサスを導入.
→基幹2号系統では中扉4枚折戸を採用.
(4)快適性向上のために冷暖房装置を採用.
(5)紙幣でも釣り銭の出る新型料金箱を採用.
(6)天井の一部に荷物棚を設置.
(7)前面方向幕と側面方向幕を大型化.
(8)車内を明るくするため側面窓を大きくし,引違式メトロ窓を採用. |
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▲基幹バスの車両設計方針の例 |
▲車両前面の愛称「ミッキー」表示 |
▲車内の様子(一例) |
▲シャンデリア風蛍光灯カバー (基幹バス引退後の研修車時代のもの) |
基幹バス車両には、局番(車号)「K」が付与されました.
(ふそう製ツーステップ車の場合「KF」)
基幹1号系統車と基幹2号系統車の区分はなく,通し番号です.
国土交通省「標準仕様ノンステップバス認定制度」が普及した現在では,車内装備は,基幹車両と一般車両で違いはありません.
外観塗装については,一般系統と区別するため,開業時に制定された基幹バス専用塗装が引き続き採用されています.
基幹1号系統用の車両は,開業時は26両が用意されましたが,一般車と同じ前乗り方式であり,一般車を基幹バスとして運用することも可能なため,予備車や増備車を一般車とするなど車両の共通化を進めており,現在の専用車は19両※が在籍しています.
基幹2号系統用の車両は,一般車とは異なる中乗り方式であること,また基幹バスレーンは基幹バス車両専用とされていることから一般車とは車両流用ができず,予備車も含め専用車のみで運用されており,開業時は41両が,現在も50両が在籍しています.
▲基幹1号系統専用車(前乗り) |
▲基幹2号系統専用車(中乗り) |
市バス基幹1号系統(東郊線)の車両 |
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前乗り中降り(料金前払い)
運行を担当する鳴尾営業所は,主に三菱ふそう車を運用していたため,基幹バス車両も三菱ふそう車が調達されました.
昭和57年開業時にモノコック車26両が導入されました(KF-1〜26).
その後,増発のため昭和59年に2両(KF-27〜28),昭和60年に1両(KF-66)が追加導入されました.
これらの車両更新のため,平成5年に13両(KF-85〜97),平成6年にも13両(KF-98〜110),平成8年に2両(KF-128〜129)が導入されました.
詳細は市バス車両>引退車種>基幹大型車>KFふそう
▲KF-23ブルドック (昭和57年式) 画像提供:MRCバス分科会顧問さま |
▲KF-66 2扉エアロスター(昭和60年式) 画像提供:MRCバス分科会顧問さま |
▲KF-110 (平成6年式) |
▲KF-110 後部より |
平成13年以降はノンステップ車が導入されました.
平成13年 日野製4両(NKH-1〜NKH-4)詳細
▲NKH-1 (平成13年式) |
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平成14年 日産ディーゼル製10両(NKN-1〜NKN-10)詳細
▲NKN-3 (平成14年式) |
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平成18年 いすゞ製7両(NKS-1〜NKS-7)
平成28年 いすゞ製8両(NKS-18〜NKS-25)
平成30年 いすゞ製4両(NKS-26〜NKS-29)詳細
▲NKS-3 (平成18年式) |
▲NKS-26 (平成30年式) |
令和5年 三菱ふそう製7両(NKF-55〜NKF61)詳細
▲NKF-55 (令和5年式) 27年ぶりの新製ふそう車 |
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平成16年10月〜 一般系統との混成ダイヤ・共通予備車 |
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平成16年10月より,平日ダイヤにて高速1号系統との混成ダイヤが組まれるようになりました.
(鳴尾車庫・森の里団地→[高速1]→栄→[基幹1]→鳴尾車庫など)
その後,土休日ダイヤにおいても一般系統との混成ダイヤが始まりました.
このような運用の効率化に加え,経年の基幹専用車の代替として一般車を調達し,予備車を基幹系統と一般系統で共通することで,在籍車両数を削減しています.
特に平成28年以降は,基幹1号系統最多運用車両数(21両?)>基幹専用車両数(19両)となっており,一般車による運用が常となっています.
基幹1号系統で運用される一般車には,「基幹バス変身マスク」「基幹バス変身プレート」が取り付けられています.
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▼表 基幹1号系統で運用される車両
区分 |
車両数 |
塗装 |
プレート等 |
高速対応 |
基幹1号専用車 |
19両 |
基幹色 |
ー |
未対応 |
基幹予備車 |
6両 |
一般色 |
あり |
未対応 |
高速車 |
8両 |
一般色 |
あり |
対応 |
基幹・高速予備車 |
5両 |
一般色 |
あり |
対応 |
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※車両数は令和2年4月現在.
※プレート等/基幹バス変身マスク又は変身プレート
※高速対応/ETC,シートベルト等
▲基幹バス変身プレートの例 |
▲基幹バス変身プレート/変身マスク |
名古屋市環境局の事業として,燃料電池バスが試行導入されました.
車両は「トヨタ/SORA」1両で,6年間のリース契約です.
市バス鳴尾営業所に配属され,令和5年(2023年)4月1日より,主に基幹1号系統にて運行されています.
本件事業に対し,令和4年11月に三菱UFJフィナンシャル・グループ各社から5,000万円の寄附がありました.
このため,車体はMUFGカラー(紅白)にラピングされています.
▲FC-1(燃料電池バスSORA)詳細 |
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市バス基幹2号系統(新出来町線)の車両 |
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中乗り前降り(料金後払い/整理券なし)
当初運行を担当していた那古野営業所は主に三菱ふそう車を,猪高営業所は主に日野車を運用していたため,基幹バス車両も両メーカーから調達されました.
昭和60年開業時にふそう車24両(那古野:KF-29〜62),日野車17両(猪高:KH-1〜17)の合計41両が導入されました.
その後,増発のため,
半年後にふそう車3両(KF-63〜65),日野車1両(KH-18)が,
昭和61年にふそう車2両(KF-67〜68),日野車2両(KH-19〜20)が,
平成元年にふそう車2両(KF-69〜70),日野車1両(KH-21)が,それぞれ追加導入されました.
当時の基幹車両の車両更新サイクルは早く,平成3年より新車投入→旧車の一般系統へ転用が行なわれました.
平成3年にふそう車12両(KF-71〜82),日野車8両(KH-22〜29)
平成5年にふそう車2両(KF-83〜84),日野車2両(KH-30〜31)
平成8年にふそう車27両(KF-111〜127),日野車11両(KH-32〜52)
平成9年にふそう車1両(KF-130),日野車0両(KH-00〜00)
平成11年にふそう車12両(モデルチェンジ:KF-131〜142),日野車9両(KH-53〜61)
平成12年にふそう車2両(KF-143〜144),日野車2両(KH-62〜63)
詳細は市バス車両>引退車種>基幹大型車>KFふそう
詳細は市バス車両>引退車種>基幹大型車>KH日野
▲KF-30 ふそうエアロスター(昭和60年式) 画像提供:MRCバス分科会顧問さま |
▲KH-17 日野ブルーリボン(昭和60年式) 画像提供:MRCバス分科会顧問さま |
▲KF-122 (平成8年式) |
▲KH-52 (平成8年式) |
▲KF-142 (平成11年式) |
▲KH-55 (平成11年式) |
基幹2号系統車両の低床化(ノンステップ化)への取り組みは基幹1号系統や名鉄バスよりも遅く,平成20年よりノンステップ車が導入されました.
現在は,これら車両50両にて運用されています.
平成20年 日野製19両(NKH-5〜NKH-23)
平成23年 日野製21両(NKH-24〜NKH-54)詳細
▲NKH-18 (平成20年式) |
▲NKH-31 (平成23年式) |
平成20年 いすゞ製3両(NKS-8〜NKS-10)
平成21年 いすゞ製1両(NKS-11)
平成22年 いすゞ製2両(NKS-12〜NKS-13)
平成24年 いすゞ製4両(NKS-14〜NKS-17)詳細
▲NKS-9 (平成20年式) |
▲NKS-16 (平成24年式) |
名鉄バス(基幹バス:本地ヶ原線)の車両 |
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中乗り前降り(料金後払い/整理券あり:対距離制運賃)
名鉄バスは,基幹系統も一般系統も同じ料金制度(後払い,対距離制)ですが,基幹バスレーンは基幹バス車両(※)しか走行できない取り決めのため,運用開始にあたり名鉄バスも基幹バス用車両30両(15代)を調達しました.
一般車と同じく全てふそう車です.
基幹バス用車両は,一般車と異なる前面塗装,「基幹バス」文字入り,バスロケ搭載が特徴です.
(※)一般車の基幹バスレーン走行は不可ですが,基幹バス車両の一般路線での運用は可能です.
市バス専用車は基幹2号系統しか運用されませんが,名鉄バスの基幹バス車両は一般路線でも運用されています.
その後,増発のため,平成元年(49代)と平成2年(40代)にも増備されています.
名鉄バスは,当初も現在も基幹車両の車両更新サイクルは早く,用途変更(新車投入→旧車の一般系統へ転用)(一般車の基幹車両への転用)も頻繁に行なわれています.
モデルチェンジ後の車両も,平成9年(17代),平成10年(18代),平成11年(19代),平成12年(10代)と連続導入されました.
▲1716 (平成9年式) |
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平成16年導入車両(14代)からはワンステップ車両となりました.
平成17年(15代),平成18年(16代)にも導入されています.
また,名古屋鉄道からバス部門の分社化(名鉄バス株式会社)に伴い,新塗装(3色塗り)も登場しました.ただし晩年に現在の塗装(岐阜塗り)に変更されています.
▲1542と1541 (平成17年式)3色塗り |
▲1614 (平成18年式)現在の標準塗装 |
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平成20年式〜平成21年式 ノンステップ車両(ハイブリッド車) |
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平成20年3月にふそう製「エアロスター エコハイブリッド」が4両(7801〜7804)が,同年夏に10両(7805〜7814)が導入されました.
また,平成21年夏には追加で10両(7901〜7910)が導入され,総勢24両体制となり,そのカラフルな塗装と相まって,名鉄基幹バスのイメージを一新しました.
当初は名鉄基幹バスはこの車種で統一する計画もありましたが,結局は24両で打ち止めとなりました.
これまでの基幹バス車両と同様に,他の新車が導入され出すと,次第に玉突きで一般車へ転用されていきました.
▲7813 (平成20年式) |
▲(左上)7809 (右上)7812 (左下)7814 (右下)7901 |
▲9色大集合 |
▲解説パネル |
上記「エコハイブリッド」車の一般車転用に伴い,平成23年(11代),平成24年(12代),平成25年(13代)導入のノンステップ車両(MP37FM)が基幹バスに転用されました.
平成27年(45代)には,モデルチェンジ後(MP38FK)のノンステップ車両が基幹バスとして新製配置されました.
平成28年(46代),平成29年(47代),平成30年(48代),令和元年(49代)にも導入されています.
市バスと異なり,LED式行先表示器のフルカラー化も進められています.
▲1356 (平成25年式) |
▲4602 (平成28年式) |
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