国の審議会答申から見た,名古屋都市圏における地下鉄新線計画について紹介します.
運輸・交通政策審議会答申と新線計画の現状 |
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従来,大都市圏の鉄道新路線の建設や鉄道輸送改善のための整備は,主に「運輸政策審議会」や「地方交通政策審議会」の答申に基づいて行われてきました.
運輸政策審議会とは,国土交通省内に設置される審議会のひとつで,大臣の諮問に応じて運輸政策の重要事項を調査審議し,大臣に意見陳述する役割を担っています.東京,大阪,名古屋の三大都市圏の交通網はここで調査審議され,将来鉄道網の姿が示されました.この国の計画に基づいて自治体は建設順位を検討し,新設路線を選定・建設してきたのが,これまでの流れです.
しかし近年では,経済成長や人口増加の鈍化,大規模開発事業の終焉などの社会経済情勢の変化により,昭和の時代から続く新線建設を中心としたインフラ整備から,鉄道以外の交通手段整備やソフト対策も含めた総合交通体系の構築の必要性が重要視されるようになってきました.
審議会答申においてもこの点が重視され,平成12年の東京都市圏を対象とした「運輸政策審議会答申第18号」を最後に,平成16年からは地方交通政策審議会による答申が行われています.
地方交通政策審議会とは,各地方運輸局内に設置される審議会のひとつで,運輸局長の諮問に応じて交通政策の重要事項を調査審議し,運輸局長に意見陳述する役割を担っています.
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表1 各都市圏の最新の答申状況 |
都市圏 |
東京都市圏 |
名古屋都市圏 |
大阪都市圏 |
答申名 |
今後の都市鉄道のあり方※ |
中部地方交通審議会答申第9号 |
近畿地方交通審議会答申第8号 |
答申日 |
平成28年4月20日 |
平成17年3月18日 |
平成16年10月8日 |
目標年次 |
平成42年 |
平成27年 |
平成27年 |
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※正式名称は「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」
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中部地方交通審議会答申第9号「中部圏における今後の交通政策のあり方」 |
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名古屋都市圏においては,平成以降の鉄道網整備の根拠となってきた「運輸政策審議会答申第12号」の目標年次(平成20年)に達する以前に,平成15年3月に中部運輸局長より中部地方交通審議会に対し諮問が行われ,平成17年3月に答申第9号「中部圏における今後の交通政策のあり方」が示されました.
中部地方交通審議会「中部圏における今後の交通政策のあり方について」
新しい答申では目標年次を平成27年とし,対象地域を名古屋都市圏から中部圏全域に拡大,対象交通機関も鉄軌道からバス,タクシー,旅客船等の公共交通機関全般及び施策の必要により自家用車等も検討範囲となるなど大きく拡大しました.
内容は,従来の運輸政策審議会答申が具体的な新路線計画を挙げていたのに対し,新答申では総合交通体系の構築に主眼が置かれており,具体的な路線計画よりも交通政策に関する内容が主となっています.
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表2 名古屋都市圏を対象とした新旧答申 |
新/旧 |
現在の答申 |
以前の答申 |
答申名 |
中部地方交通審議会答申第9号 |
運輸政策審議会答申第12号 |
答申日 |
平成17年3月18日 |
平成4年1月10日 |
目標年次 |
平成27年 |
平成20年 |
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過去の計画に基づく新線計画 |
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近年の名古屋都市圏では,平成4年の運輸政策審議会答申第12号「名古屋圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」に基づいて鉄道交通の整備が行われてきました.
既に目標年次である平成20年を過ぎた”賞味期限切れ”の状態にありますが,具体的な地下鉄新線計画を明示した”最新”の計画でもあります.この答申第12号を紹介します.
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平成4年 運輸政策審議会答申第12号 (目標年次:平成20年) |
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答申第12号は名古屋都市圏を対象としており,地下鉄だけでなく,JRや私鉄も含み,鉄道だけでなく新交通システムなどの計画もあります.
このうち地下鉄新線については,市交○○線として6路線が答申されており,現在までに未完成の路線は4路線あります.
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答申路線 A (平成20年までに整備が適当) |
市交上飯田線の延伸 (平安通〜新栄町〜丸田町) |
市交東部線 (笹島〜丸田町〜吹上〜星ヶ丘〜高針橋) |
答申路線 B
(平成20年までに整備の推進を図る) |
市交6号線の延伸 (七宝〜稲葉地〜中村区役所) (徳重〜豊明北) |
市交金山線 (戸田〜金山〜丸田町〜黒川) |
答申路線 C
(今後新設整備について検討すべき) |
市交6号線の延伸 (豊明北〜豊田市南部方面) |
市交東部線 (高針橋〜岩崎) |
市交金山線 (黒川〜楠町) |
南部線 ※地下鉄路線ではない (桜本町〜大江〜名古屋港〜稲永) |
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平成20年までに整備が適当とされる答申路線Aは平成4年当時,9路線ありましたが,地下鉄や第三セクター,JRの手によって順次整備が行われ,現在も残る未整備路線は2路線のみとなりました.
一つは市交上飯田線の延伸で,現在開業している上飯田〜平安通間から南に延伸し,東山線新栄町を経由して丸田町で市交東部線に乗入れる計画です.以前の計画では7号線と呼ばれていました.
もう一つは新規路線の市交東部線で,名古屋駅南の再開発地区,笹島を起点とし,丸田町から桜通線吹上,東山線星ヶ丘を経由して高針橋に至る路線です.この路線は利用者の多い東山線を補佐する目的も持つ,平成4年答申で新登場した計画路線です.
平成20年までに整備の推進を図ることが適当とされる答申路線Bは,2路線3区間が答申されており,現在までに整備が行われた路線はありません.
市交6号線は,現在地下鉄桜通線として開業している中村区役所〜徳重間の両端を延伸する計画があります.西側は現在の起点である中村区役所からさらに西に延伸し,東山線中村公園を経由し,市外の七宝まで延伸する計画です.東側は終点の徳重からさらに延伸し,市外の豊明北まで,さらに答申路線Cとして,その先の豊田市南部方面(ルート未定)まで延伸する計画もあります.
市交金山線は,戸田で近鉄名古屋線と相互乗入を行い,東山線高畑,名城線金山,鶴舞線鶴舞,丸田町,桜通線高岳を経由して名城線黒川に至る新規路線です.以前の計画では5号線と呼ばれていました.答申路線Cとして,黒川からさらに北へ延伸する計画もあります.
これら地下鉄路線計画のほかにも,市内新規路線として答申路線Cの「南部線」があります.
この路線は桜通線桜本町駅から名鉄大江,名港線名古屋港を経由してあおなみ線稲永駅に至る路線で,第三セクターによる新交通システムでの導入が想定されています.
上記計画路線がすべて完成した場合の未来路線図です. ルート,駅名の選定は主観によるものですので,ツッコミはご遠慮ください.
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