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 地下鉄建設史

 
 地下に眠る「JR未成線」と,地下鉄駅構造物の関係を紹介します.

昭和末期 地下鉄桜通線と国鉄(JR)名古屋駅の交差

 地下鉄桜通線(高速度鉄道第6号線)は,昭和47年(1972年)都市交通審議会答申にて「都心を貫通し、住宅地として開発の著しい西部及び東南部を結ぶ路線」として位置付けられました.
 当時は東山線の混雑率が200%を超えるなど限界に近づいており,その解消を図るバイパスとして,名古屋駅を通る新たな東西方向の地下鉄が必要とされました.

 名古屋駅を東西方向に通り抜けるには,国鉄(JR)名古屋駅と交差する必要があります.

 交差方法には複数案(A案〜D案)があり,どれも難工事が予想されることから,市と国鉄の協議は難航しました.


▲A案〜D案

▲B’案

 

 結果的に,国鉄名古屋駅の中央コンコース直下を一直線に貫き,開削工法とするB案となり,西側駅前広場(太閤通口)と東側駅前広場(桜通口),鉄道各社の駅からアクセスできる,乗換利便性の高い駅となりました.
 (地下深く降りる必要があるのが玉に瑕ですが.)

ルート 工法 ソフト面の評価 ハード面の評価
国鉄駅コンコース大阪方を横断 シールド 駅間が短すぎる コンコース大阪方の業務施設に支障あり
国鉄駅コンコース直下を横断 開削 乗換利便性がよい 工事中,コンコースの旅客流動に影響あり
B’ シールド 駅間が短すぎる 駅広直下のため連絡口設置が困難
笹島交差点直下
(太閤通)
開削 他路線との乗換困難 施工は比較的容易
国鉄駅ビルと名鉄百貨店の間 シールド 現在の混雑がさらに増す 連絡設備及び駅設備が困難
D’ 開削 国鉄交差部の工事桁架設が困難

 

 建設工事については,昭和58年(1983年)3月28日に工事協定が締結され,市から国鉄に委託されました.
 工事は国鉄(昭和62年民営化によりJR東海に継承)が担いました.

 JRコンコースの下に地下鉄駅を建設する工事は,(駅西から駅東に向けて)エスカ地下街,新幹線,在来線,駅ビル(→タワーズ),名鉄線,テルミナ地下街(→ゲートタワー),東山線,ユニモール地下街の下を,これらをアンダーピニング工法で支えながら掘削する超難工事となりました.
 (平成元年度土木学会技術賞を受賞)


▲桜通線はJR駅の直下に建設された

▲桜通線名古屋駅の位置


▲名古屋駅西側駅前広場(太閤通口)


▲名古屋駅東側駅前広場(桜通口)
 ※駅前モニュメント撤去前の様子


▲ホームに飾られた土木学会技術賞プレート
 建設工事は難工事となった
 

 

 

平成元年開業 桜通線名古屋駅

 地下鉄桜通線は,JR中央コンコースの真下,地表から約20mの深い地下にあります.
 地上はJR中央コンコースで,地下1階はJRの商業施設「ファッション・ワン」です.
 地下2階が桜通線コンコースで,地下3階に桜通線ホームがあります.
 構造的にも,JR名古屋駅と一体化したような作りです.


▲名古屋市交通局webより「駅構内図」CC-BY-SAを一部加工

 

 地下鉄桜通線名古屋駅は,一見すると地下3階建てのように見えます.
 しかしながら,場所(断面)によって「中地下1階」や「中地下2階」が存在したり,東山線・名鉄線トンネルをアンダーパスする箇所では天井が低かったりと,2層構造から4層構造が入り乱れる,非常に複雑な構造の駅となっています.

 

 

JRアクセス線用構造物

 桜通線名古屋駅の西側は,地下3階ホームの終端は在来線の下あたりですが,駅構造物自体は西側駅前広場(太閤通口)まで続いています.

 西側駅前広場の下には,地下3層構造の地下鉄構造物があります.
 地下1階部分はコンコース通路で,地下鉄13番出入口やエスカ接続口があります.(他に換気塔があります.)
 地下3階部分は桜通線本線で,上下線の間は機械室です.

 その隙間,地下2階部分に3径間の不思議な未利用空間があります.

 この場所は,建設記録によると
 「地下2階部分は在来線の線増計画を考慮した構造とする」
 「将来JR線のアンダーパスを考慮し,1面2線分のスペースを確保」

 との記載があります.JRの新・在来線と交差する計画があったようです.

 そのため,地下1階と地下3階は交通局所有空間(区分地上権設定)ですが,地下2階のみJR所有空間(区分地上権未設定)となっています.

 

 『JR在来線の線増計画』の詳細は不明ですが,当時は中央新幹線(現在のリニア)のルートが未定であり,名古屋駅を通らない可能性がありました.
 名古屋駅から離れた場所に「中央新幹線の”新”名古屋駅」が設置される可能性がありました(一説には西区小田井付近).
 このため,
東海道新幹線名古屋駅と中央新幹線の新名古屋駅を結ぶ新線「アクセス路線」の計画があったとの説があります.

 なお,「アクセス路線」は地下2階駅に限定したものではなく,高架駅としても線増できるよう,地下鉄構造物自体が将来荷重を見越した強度で設計されています.


▲JRコンコース直下の地下1階部分

▲左のカメラ位置 地下1階コンコースにある段差
 この段差こそJR未成線(アクセス線)の証拠


▲西側駅前広場部の縦断面図


▲西側駅前広場部の横断面図


▲地下1階平面図
 桜通線駅の最西端だけ構造物が別の形状となっている


▲在来線の線増計画のイメージ(想定)
 中央新幹線アクセス線のイメージ(想定)


▲地下1階の様子(桜通線コンコース)
 エスカ接続口・13番出入口がある
 この真下がJRアクセス線構造物
 


▲西側駅前広場 市とJRの土地から成る
 JR用地に桜通線13番出入口や換気塔があり,その下にJRアクセス線構造物が眠っている


▲同左
 新幹線に隣接した高架駅の可能性もあり

 

 

その他

 平成元年当時のリニア計画の名残

 現在,桜通線名古屋の北側において建設工事が進められている「リニア中央新幹線」は,平成23年(2011年)5月に新幹線整備計画が決定され,平成26年(2014年)12月に着工したものです.

 ただし,全国新幹線鉄道整備法に基づく「中央新幹線」計画そのものは,昭和48年(1973年)11月15日の運輸省告示よりありました.
 このため,昭和58年(1983年)に工事が始まった桜通線名古屋駅の建設工事では,当然に中央新幹線計画(と,アクセス線計画)が反映されることになりました.

 

 アクセス線計画以外にも,当時から現在まで続く,JR東海の中央新幹線にかける強い想いが反映された施設があります.

 平成元年当時,JRは,名古屋駅構内及び駅前広場における地下鉄工事に合わせて,駅構内を7ゾーンに分け,大規模な店舗開発を行いました.
 各々ゾーンのネーミングには,次の3つの概念に基づき,キーワード「1」ワン(ONE)が用いられました.

  (1)21世紀に向けの夢・期待・展望
  
(2)リニヤエクスプレス〜東京・大阪間を1時間で結ぶ(ONE HOUR)
  (3)あらゆる意味で地域1番店を目指す

 近年のリニューアルにより,「グルメワン」が「うまいもん通り」に名称変更されるなどしましたが,現在も桜通線の上にある「ファッション1」だけは,「FASHION ONE」として名称が残っています.

開発場所 ネーミング 開発概要 →その後
広小路口 トリップ1 旅行センター・旅行グッズ店・飲食店 うまいもん通り広小路口
中央コンコースの南側 グルメ1 名古屋の味再発見をテーマにした飲食店 うまいもん通り
太閤通北口
新幹線北改札の北側
デイリー1 物販店・飲食店 リニア工事中
桜通線地下1階 ファッション1 物販店(ファッション系) FASHION ONE
中央コンコース沿い スイート1 物販店・飲食店 同左(ぴよりんSTATION等)
太閤口(中央) メディアワン 待合空間 (銀時計?)


▲「○○ワン」シリーズの生き残り
 B1階商業施設「ファッション・ワン」
 

 

 

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